子供の頃はなにもかもが怖かった。
夕方、物置の扉がわずかに開いていたとき、そこから誰かが覗いていたらと想像して怖くなった。
夜の障子に映る木の影が、なにか得体の知れないものに見えたこともある。
寝ているとき、頭からつま先まで布団をかぶって眠った。なにかに足首を掴まれないように、枕元で自分の顔を覗き込まれないようにするため。
大人になるにつれ、その感覚は鈍感になっていった。あの怖さはなくなったのだ。
何かに怯えるようなことはもうない。
でも、時折ふと思う。
気にしなくなっただけで、
あの暗がりに、扉の隙間に、視界の端に。
まだ、なにかいるのかもしれない。